紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所(三重県津市)
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 三重県のため池の生物

 
カワセミ

 カワセミを初めて観察した時、その小さな体を瑠璃色に輝かせて、枝から水面めがけて果敢に飛び込む姿に、誰もが感動することだろう。筆者がカワセミを初めて間近に見たのは、20年ほど前に、津市一身田町にある専修寺境内の小さな池で、繰り返し飛び込んでは小魚を獲っている姿であり、しばらくその光景に見とれていた。

 その後、仕事の関係で見かける機会がなかったが、定年退職後に、ため池に出かけることが多くなり、あちこちのため池でその姿を見かけるようになった。しかし、カワセミは人の気配を感じると、水面近くを素早く飛んで行ってしまう。

 カワセミの採餌を見かけるのは、決まった場所であることが多い。それは、カワセミがため池で獲る餌が主にモツゴなどの小魚であることから、餌の豊富な場所で、しかも、水面から2〜3mほどの高さに、カワセミが留まって小魚をねらうのに適した枝が張り出しているところだ。

 写真は、津市大里窪田町にある大沢池で撮影したものだが、この場合は、堰堤上の鉄の構造物を足場に餌を獲っていた。水中にいる小魚をじっと観察しているようだ。カワセミは近づくとすぐに逃げるので、持参のデジカメ中型機の望遠機能を使って遠くから撮影したが、解像度はこの程度が限界であった。
 
 カワセミのことを漢字で「翡翠(かわせみ)」と書くが、これはヒスイとも読み、ヒスイは深緑色の宝石の1種である。カワセミの頭から背中の色は、光線によって緑色や濃い青に変化して見える。

 カワセミは三重県付近では、年間見られる留鳥であり、春から夏に年2回繁殖することがある。巣は、垂直に切り立った崖に、直径約7cm、深さ50〜100cmの横穴を掘って作る。

 高度経済成長下で、都市近郊の河川の水質が悪化した時期には、カワセミの姿が消えたと言われていたが、最近は、水質規制により河川の水質が向上してきたために、カワセミが都市近郊の河川にも戻ってきている。
 
 筆者は、2006年から2008年まで、トンボの観察で、津市にある6つのため池、すなわち、芸濃町の二重池ため池群、安濃町の小古曽池、大里窪田町の大沢池、一身田大古曽の新池・平子池、上浜町の下池・北ノ池、野田の赤池・池尻池ため池群に、夏季、毎月通った。その結果、二重池ため池群、小古曽池、大沢池、赤池・池尻池ため池群でカワセミを目撃したが、採餌を観察したのは、大沢池と赤池・池尻池ため池群であった。カワセミは、用心深い鳥なので、その生活を攪乱しないように、遠くから望遠レンズを通して観察したいものだ。

 大沢池については、生物調査を行っており、モツゴとヌマエビの密度が非常に高いことが分っており、このことが、カワセミのハンティングを見かけるチャンスの多かった理由である考えている。ため池の中の生物多様性が愛すべきカワセミの生活を支えていると言える。

 しかし、大沢池の水面の大部分がヒシで被われるようになると、カワセミを見かけなくなり、また、この池で繁殖しているカイツブリの親子が、ヒシの葉をまたいで、あるいは、ヒシの葉の上を移動しているといった笑えない風景に出会う。水鳥の生息には、水面がある程度見える程度に、ヒシの繁殖を管理する必要がある。(写真は、カワセミ) 
(2010.1.17 M.M.)

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